乾癬
乾癬とは?
乾癬(かんせん)とは、炎症角化症という皮膚疾患です。皮膚では常に生まれ変わりがされていて、新しい皮膚が作られ、古くなったものが角質となり剥がれ落ちていきます。この速度が極端に早くなってしまう疾患です。
乾癬の原因
乾癬は、免疫機能の異常が関わっていると言われています。皮膚のターンオーバー(新陳代謝)が異常に活発化し、通常の約10倍の速さで皮膚が作られている事が原因とされています。
体質的な原因や、遺伝、外的刺激(気候、ストレス、ウイルス感染、喫煙、飲酒、食生活など)や、内的な原因(糖尿病、脂肪異常症、肥満など)が加わって発症しやすくなると考えられます。皮膚は本来、傷つくと治す為に反応が起こります。
その際に皮膚表面の細胞の増殖速度が速くなったり、角層が厚くなったりしますが、乾癬は傷がついていない正常な皮膚にも広い範囲でその作用が働いている事により起こる症状です。本来は細菌やウイルスに対して反応するT細胞という免疫が悪さをして起こると言われています。
乾癬の症状
少し盛り上がった赤い発疹の上に銀白色の鱗屑(りんせつ)が付着してポロポロとフケのように剥がれ落ちます。通常の10倍以上の速度で皮膚が生まれ変わる為、皮膚が硬く厚くなってきます。頭、肘、膝の内側、腰、おしりなど皮膚の擦れやすい部分にできやすいと言われますが、爪を含む全身どこにでも起こる可能性があります。
乾癬の種類
乾癬は大きく分けて5つの種類があります。
1.尋常性乾癬
乾癬のほとんどを占めるのが尋常性乾癬です。頭、肘、膝などの擦れやすい部分や刺激を受けやすい部分に見られますが、全身に広がる事があります。
2.滴状乾癬
滴状乾癬は、親指程度の大きさのポツポツが全身に広がり、鼻やのど、歯など体のどこかにバイ菌の巣が存在すると言われ、それが悪化する時に起こります。扁桃腺炎がきっかけで発症する事が多いと言われています。
3.乾癬性紅皮症
尋常性乾癬が全身に広がり、皮膚全体が赤みを帯びた状態になる事。最初から赤みを帯びた状態で発症する事は珍しく、未治療や不適切な治療、合わない薬剤や感染症の影響により尋常性乾癬から乾癬性紅皮症を発症してしまう事が多いです。
4.膿疱性乾癬
膿疱性乾癬は、急激に全身の皮膚が赤みを帯び、うみを持った状態が多発し、発熱や倦怠感が伴う疾患です。放置すると大変危険で、全身衰弱や重篤な状態になると言われています。
5.関節症性乾癬
関節症性乾癬は、皮膚の症状と共に関節リウマチのような関節が腫れたり痛んだりする症状が出ます。乾癬にかかってから、数年後に関節の腫れや痛みが出てくる事が多いと言われています。
乾癬の予防法・治療
日常生活での注意点
ストレス
ストレスや睡眠不足は乾癬を悪化させる可能性があります。乾癬は皮膚を強く擦る刺激で悪化する皮膚疾患なので、ゴシゴシ擦らないように注意しましょう。
食生活
肥満やメタボリックシンドロームなどを持っている方は乾癬を発症しやすい傾向にあります。低カロリーやバランスのとれた食生活を心がける事が大切です。生活習慣や嗜好品(喫煙や飲酒)で乾癬が悪化する事があるので、意識して控えるようにしましょう。
治療法
乾癬の発症は、免疫細胞の異常が関わっています。その為、皮膚の表面の細胞が異常に増殖して炎症を起こしている状態になります。治療は大きく分けて4つの方法があります。
1.外用薬
ステロイド軟膏、ビタミンD3軟膏を使用するのが一般的です。ステロイドは皮膚の赤みや炎症に効果が期待でき、即効性もあります。ビタミンD3は皮膚細胞の異常増殖を抑え、正常な皮膚に導いていきます。効果が出るまでに時間がかかるので、根気強く塗る事が大切です。
最初にステロイド軟膏で炎症を抑え、良くなってきたらステロイドを減らし、ビタミンD3軟膏に変えていきます。ドボベット軟膏やマーデュオックス軟膏という、ステロイド軟膏とビタミンD3軟膏を混ぜた外用薬も有効です。一度でどちらの効果も得られるので使い勝手が良いのが特徴です。皮膚表面のガサガサを抑える保湿剤を補助的に使用する事もあります。
2.内服薬
他の治療と組み合わせて内服薬を用います。痒みがある場合は抗アレルギー薬が処方される事もあります。
チガソン(エトレチナート・ビタミンA誘導体)
皮膚の異常な細胞の増殖を抑える働きがあります。内服中は定期的に採血を行い、肝臓や腎臓の機能を調べます。妊娠中や妊娠可能な女性は服用できません。服用の際は避妊(女性は2年、男性は6ヶ月)が必要です。
ネオーラル(シクロスポリン・免疫抑制剤)
免疫に関する細胞の働きを抑え、炎症を鎮める働きがあります。腎障害や高血圧などが起こる可能性がある為、定期的に血圧測定と血液検査を行います。
オテズラ(アプレミラスト・PDE4阻害剤)
2017年に発売された新しい薬で、過剰に働いている免疫システムを正常化させ、炎症を抑える働きがあります。皮膚症状や関節症状、かゆみに効果的です。新しい作用の乾癬治療薬として注目されている薬で、従来の治療で皮膚症状の改善が得られない場合や、関節の痛み、変形がみられる方が治療対象になります。副作用で下痢や吐き気などの消化器症状が起こる事があるので、量を少しずつ増やしながら症状が出るのを防ぎます。
3.光線(紫外線)治療
ナローバンドUVBを使用し、皮膚の細胞の増殖を抑えたり、炎症を鎮めていきます。
4.注射剤(生物学的製剤)
生物学的製剤とは、生物が産生するタンパク質をもとに作られた薬剤です。免疫機能に関与する特定の受容体を標的とする注射で、症状が強く効果が見えにくい患者様に対して行う治療です。